2020年絶対見ておきたい幸せ映画「ぶあいそうな手紙」
ブラジル映画です。
2020年なみいる有力候補を抑え、コロナにも負けずに再開した映画館で、幸せ最優秀映画賞をとってもらいたい一本。
本屋大賞みたいに、見た人が決めるやつ。
こんな人にオススメのブラジル映画「無愛想な手紙」
人生に迷った、あるいは繊細な気持ちになっているときにぜひ見たい。
心が弱っている時にリアルで現実の痛いところをを直視したような、血みどろ映画はつらすぎる。
登場人物に自動的にシンクロしてしまう方もいることでしょう。
そんな人も見終わって気持ちが温かくなる、今年、文句なしにおすすめしたい映画。
主人公は年を重ねて視力もだいぶ落ちてきた独り暮らしのおじいさん。
画面は地味です。大きな事件も起きない。
強いて言えば見知らぬ若い女の子が生活に侵入してくるくらい。
コロナの中先駆けて日本で公開された映画
この映画の封切りはコロナかをどうにかこうにか乗り越えたかな~?と思われた7月初旬、アメリカや本国ブラジルを先駆けて日本で公開されたというもの。
2020年7月に公開されて、吉祥寺アップリンクに見にいきました。
映画館の客席はまばら。まだまだコロナの気配。
本当なら4月にブラジルで公開されるはずだったこの映画、パンデミックによってブラジルでもアメリカでも公開のめどが立っていない中、日本の映画館が再開し、先行して上映されたという。
まだまだコロナかでの気持ちが沈んでいた中、この映画で前向きにな幸福感をもらい、泣いてしまいました。
いや、私だけでなく映画館にいた人たちほとんどが涙ぐんでいたと思う。
一緒に行った人も、別の日に見に行った友人たちも最後泣いてしまったと言っていました。
興奮!とか衝撃!ではないけれどじんわりずーっと続く幸せ感…。
今でも思い出すとぎゅっと泣けてしまいそう。
そんなブラジル映画、舞台はポルトアレグリ。
「ぶあいそうな手紙」見どころ紹介
見どころ① 見知らぬ女の子を家に入れる孤独な老人
こう書くと不安しかない。
もし自分の身内だったら迷わず止めるでしょう。
クビにになっちゃったお手伝いさんのように。
78歳のエルネストは視力も弱り、頑固で気難しい一人暮らしのおじいさん。
ウルグアイからブラジルにやって来て46年になる彼は、離れて暮らす息子とも疎遠。
年金暮らしで、時々身の回りの世話をしてくれるお手伝いさんがくる。
そんなエルネストが偶然若いブラジル人女性のビアと知り合い、手紙の代筆を依頼する。
ビアのいでたちが目の周りがアイラインがっつりで耳にはたくさんのピアス。
腕には入れ墨で、黒いマニキュア、髪はベリーショートと現代の若い女性。
78歳のエルネストと並ぶと孫とおじいちゃん、あるいは悪い女と騙されてる男に見えてしまいます。
最初、棚の上に置いておいたお金をくすねるビア。
そして実験するようにまた同じところにお金を置くエルネスト。
こんな駆け引きを重ねて、少しずつお互いに心を通わせていく。
家でエルネストが食事を用意してまっていたら、朝DVの元カレを連れて起きてきたときには、はあ?なにこの女どういうこと?
やっぱり年寄りがひどい目に遭う痛め付ける設定?と逆上しそうになりましたが、違った…。
良かった。
一緒に食事をしようとしたら、レストランがあまりに高級で、生活費の年金がなくなっちゃう、ビアが出ようと言って一緒に出るシーンが心通じてる感じがしてほっこりしました。
DVのレスラー系のチンピラ元カレを切れないダメ女かと思いきや、エルネストと一緒にいることで、毅然とした態度で拒絶できるようになる。
やはり手紙の代筆をしてあげるイキイキとした姿は、きっと本来の親切で人懐こくあたたかい性質の彼女なのだとわかります。
そしてビアといることで、だんだんと若々しく活発になるエルネスト。
町の広場で詩の朗読をするとき、元カレに銃口をむけるときには若い頃はさぞかしりりしい青年だったのだろうと推測します
見どころ② 美しいポルトアレグリの町並み
この映画、ブラジル映画につきものの、ファベーラが出てこない。銃撃戦もない。
アルゼンチンやウルグアイのヨーロッパからの移民が多く、ヨーロッパ文化の影響を受けているというポルトアレグリ。
古い建物の入り口やちょっと出てくるレストランがステキです。
食卓で赤ワインを飲む姿がまた良いのです。(ビールではなく赤ワイン!)
映画に流れるブラジル音楽のレジェンド、カエターノ・ヴェローゾの曲も心に染み入る。
他にも家で調理するシーンなんかも、いちいちじわっと来るのです。
家具や小物が一つ一つ丁寧に選ばれています。
見どころ③ 隣のじいさんとの友情
朝、新聞が来ると持ってきて、目が見えないだろ?読んでやる。と言って持って来る。
または自分が先に読んじゃう。
チェスの相手を時々ズルしながら楽しむ。
憎まれ口をききながら、相手の存在を大事にしている。
この2人の交流もあったかい気持ちになります。
最後のハグはほんと、切ない。
人生最後のハグかもしれない。
見どころ④ 手紙
最初届いた手紙を読むところからはじまり、全編に手紙が出てくる。
この手紙のオトシマエをどうつけるのかと思っていたら、最後、一気に進むラストシーンにじわりと泣けました。
孫に送るメールレターも、ビアに言いたいことを伝えるのよと促され、気持ちを打ち明けるエルネスト。
手紙という、時間をおいて届くものを受けとることの喜びがだんだんと伝わってきていたのですが。
最後は手紙ではなく、行動に出るのです。
最初どういうことかわからなかったのですが、見ているうちに震えるほどの幸福感を感じました。
そしてやはりブラジル映画。
カエターノ・ヴェローゾの音楽が素晴らしいです。
最後に
自分はどう生きたいのか?残りの人生を。
という昔からの問いに、前向きに一つの答えを指し示してくれるような一本でした。
こういう映画、ほんとにめったに出会えない。
見に行ってよかった。
大きな画面でまた見たいと心から思える。
監督・脚本はアナ・ルイーザ・アゼヴェード。
1959年、ポルトアレグレ生まれの大人の女性ですね。
インタビューでこんなことをおっしゃってます。
質問:異文化間の交流についてはいかがですか?
「文化が違っても通じ合えると思っています。『ぶあいそうな手紙』は、すでに韓国の釜山映画祭でも上映され、キューバでも公開されましたが、観客の反応がとてもよく似ているんです。人間が持っている自然な感情や、世代の異なる人々の交流、老いというような問題については、きっと誰もが普遍的な関心を持っているのではないかと思っています」
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c03093/
日本でこんな知らない人との交流なんておきないよなーと思うかもしれないけど、世代をこえたシェアハウスとかもあるようですし、ほんとのところは他人と交流したい気持ちがあるのでしょうね。
銃撃戦も血しぶきも、裏切り者も、人殺しも出てこない映画です。
現実は、毎日どこの国でもうんざりするようなニュースばかりで、映画のなかでまでひどい話を聞きたくないよーという方にぜひ。
少し、生きていることを肯定する気持ちになれるかも。
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